アイドル辞めないで
私の名前は、大東花梨、23歳。

社会人2年目。

毎朝7時に起き、8時に家を出て、人混みの中をかき分け、満員電車に乗り、会社に行くどこにでもいるごく普通の会社員。

私の仕事は、文房具を売るために様々な会社に営業に行くいわゆる営業マンだ。

私の友達は、楽だからという理由で事務を選ぶ子が多い。

私も最初は、事務仕事をしたかったのだが、お金を多く稼げるという理由で営業を選んだ。

なぜ私がより多くのお金を稼ぎたいかというと、それは…

それは…

それは…

それは…

推しのためだ。

より多くの時間を推しのために使いたいからだ。

推しのためならば、私は、今日も頭を下げることができる。

取引先の社長に怒鳴られても、お局に嫌味を言われても、後輩が失敗した尻拭いをさせられた時も、オネェ様に仕事を押し付けられた時も、

私は、笑顔で仕事を続けることができた。

それは…

それは…

それは…

星名様がいたからだ。

まんまるの目、たくさんのダイアが入っているのではないかと言えるほどの瞳の輝き、サラサラの黒髪、前髪は流行りのセンター分け。

「星名様。今日もありがとうございます。今日もあなたのおかげで生きていけます。」

私は、照明が消え始めている夜12時前の会社。

マイテーブルの上に置いていた星名様の写真を眺めながら、今日が勝負の日だと言ってデートに行ってしまったオネェ様お局の仕事をするためパソコンを眺める。

私は、星名様がいるから今日も生きていくことができる。

私の推しである星名様は、大手芸能事務所Skyの練習生ユニット「Flowers」のセンター。

まだデビューしていないが、アリーナツアーを行う程、人気が高いのだ。

次にデビューするのは、Flowersだと言われている。

そのデビューに近づくために、私ができることは、全てやろうと決めていた。

雑誌の人気投票のために、同じ雑誌を何冊も買い、コンサートをする際には、全部の会場のチケットを買い、その遠征費も払い、推しが出ているテレビ、ラジオは、必ずチェックしている。


それが彼の幸せに繋がるから。

「僕の夢は、デビューです。それを叶えて、皆様をより幸せにしたいです。力を貸してください。」

彼のこの言葉を信じて、私は、今日もパソコンと向き合う。
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