絶え間ない心変わり
温室で育てられた薔薇は美しかった。
水も栄養も乾く前に与えられ、飢えることを知らないように大輪を誇らしげに咲かせている。

(綺麗だけど、野生みがないな)

こんなドライな感想を抱く俺の隣で、亜世さん(最近下の名前で呼ばせてもらっている)は何を思うのか。

「……」

チラと横顔を見るけれど、ポカンと天井を見上げたりしている。

(何考えてんだろ)

花を共通項にして2ヶ月ほどやってきた俺たちだが、ほとんど彼女を理解できていない。
せっかくこうしてデートっぽい流れには持ち込んだものの、予想した以上に色めきがない。

(薔薇より亜世さんの生態が気になる)
「亜世さん、つまんないですか?」

尋ねると、彼女は視線を下ろして首を振った。

「そんなことないですよ」
(本当か?)
「ならいいんですけど」

作戦なのか天然なのか、相変わらず彼女は意味深でミステリアスだ。
少しだけ染めているブラウンのボブヘアは年齢より若く見える。
眼鏡をかけている時とそうでない時の印象に差があって、今日はコンタクトにしたようで柔らかい印象だ。

(可愛いといえば、可愛いけど……やっぱり色気はないよなあ)

こんな失礼なことを思うけれど、もう少し近づいてみたい気がしないでもない。
会話が弾まないなら、何かムードが出そうなところに移動するか。

「足、疲れてませんか」
「いえ……あ、でも。さっき英国庭園風のカフェがありましたね」

(気づいてたのか)

声をかけそびれて通り過ぎたけれど、彼女も同じように気になっていたようだ。

「戻る感じになりますけど、行きますか」
「はい」

お互いそこから先の温室に未練を見せず、カフェのある方向へ踵を返した。


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