シリアル・ホラー
「みぃ~りぃ~ちゃ~ん」
丸夫くんがのそのそと近付いてくる。その白くてふっくらとした手が、私の顔に向けて伸ばされる。
「君はいつもぉ~、ぼくのことをかわいそうな目で見てたよねぇ~。優しくしてくれたお礼にぃ~、特別に可愛いかたちにしてあげるねぇ~」
「いや……嫌だ! 来ないで!」
私は必死に後ろへ下がろうとしたが、蜘蛛の手になった両親が後ろから私の身体をがっちりと固定した。身動きが取れない。
丸夫くんの手が、私の左目に触れた。
ベチン。
痛みがなかったのが、何よりも恐ろしかった。視界の左半分が信じられないほどの速さで反時計回りに回転し、私の感覚を狂わせていく。丸夫くんは私の左眼球をくり抜き、それを私の手のひらの真ん中に埋め込んだ。
「あぐっ、あ、あ……」
声が出ない。脳の芯まで丸夫くんの泥のような意志が流れ込んでくる。
恐怖が、絶望が、急速に薄れていく。あんなに気持ち悪いと思っていた丸夫くんの顔が、今は神々しく、愛おしいものに見えてくる。
「うふふ……あははは!」
まりちゃんが頭の上の手を叩いて笑った。
「よかったね美里ちゃん! これでずっと丸夫様と一緒だよ!」
手のひらに埋め込まれた私の左目が、目の前にいる「偉大なる丸夫様」の姿をじっと見つめていた。ああ、なんて素敵な姿なんだろう。どうして今まで、彼の素晴らしさに気づかなかったんだろう。
「なぁ~んだぁ~……」
私の口から、自分でも驚くほど間延びした、スローモーションのような声が漏れ出た。
「丸夫様のかたちぃ~、すっごくぅ~、かっこいいぃ~よぉ~……」
私は手のひらの目で丸夫様を崇めながら、新しく生まれ変わった自分の身体を愛おしく撫でまわした。もうすぐ、世界中のすべての人間が、丸夫様の粘土細工になる。それはなんて幸福で、美しい夏休みなのだろう。
― 完 ―
丸夫くんがのそのそと近付いてくる。その白くてふっくらとした手が、私の顔に向けて伸ばされる。
「君はいつもぉ~、ぼくのことをかわいそうな目で見てたよねぇ~。優しくしてくれたお礼にぃ~、特別に可愛いかたちにしてあげるねぇ~」
「いや……嫌だ! 来ないで!」
私は必死に後ろへ下がろうとしたが、蜘蛛の手になった両親が後ろから私の身体をがっちりと固定した。身動きが取れない。
丸夫くんの手が、私の左目に触れた。
ベチン。
痛みがなかったのが、何よりも恐ろしかった。視界の左半分が信じられないほどの速さで反時計回りに回転し、私の感覚を狂わせていく。丸夫くんは私の左眼球をくり抜き、それを私の手のひらの真ん中に埋め込んだ。
「あぐっ、あ、あ……」
声が出ない。脳の芯まで丸夫くんの泥のような意志が流れ込んでくる。
恐怖が、絶望が、急速に薄れていく。あんなに気持ち悪いと思っていた丸夫くんの顔が、今は神々しく、愛おしいものに見えてくる。
「うふふ……あははは!」
まりちゃんが頭の上の手を叩いて笑った。
「よかったね美里ちゃん! これでずっと丸夫様と一緒だよ!」
手のひらに埋め込まれた私の左目が、目の前にいる「偉大なる丸夫様」の姿をじっと見つめていた。ああ、なんて素敵な姿なんだろう。どうして今まで、彼の素晴らしさに気づかなかったんだろう。
「なぁ~んだぁ~……」
私の口から、自分でも驚くほど間延びした、スローモーションのような声が漏れ出た。
「丸夫様のかたちぃ~、すっごくぅ~、かっこいいぃ~よぉ~……」
私は手のひらの目で丸夫様を崇めながら、新しく生まれ変わった自分の身体を愛おしく撫でまわした。もうすぐ、世界中のすべての人間が、丸夫様の粘土細工になる。それはなんて幸福で、美しい夏休みなのだろう。
― 完 ―


