推しにおされて、すすむ恋
「俺はね、いつも元気に笑うゆのが好きだよ。だから今朝みたいに、思い詰めてる顔を見るのはツライんだ」
「あ、ごめんね。私、勝手に勘違いしちゃって」
謝ると、「そうじゃなくて」と玲くん。
「さっき告白しちゃったけど、俺……ゆのを悩ませたくないんだ。急に好きって言われても、ビックリするよね。だから、忘れてほしい」
「……ん?」
忘れてほしい?
え、なんで⁉
玲くんの言葉におったまげていると、当の本人は眉を下げて笑う。
「ゆのが好きなのは俺じゃなくて、ノアだもんね。大丈夫、分かっているから」
「(あ、そういうことかー!)」
これまでの自分に、頭を抱える。
そうだよ。私、今まで散々「ノアが好き!」って玲くんに言ってたもんね。よりにもよって、本人に!
でも玲くん、違うの!
ノアは、あくまで推しだから!
私が好きなのは玲くんなんだよー!
勘違いする立場が、逆転しちゃった今。
からまった糸をほどけるのは、私しかいない。