再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり
あきらかに普段使っている様子のない部屋の綺麗に整えられたベットに運ばれて、寝かせてもらった。
その間も、私の頭の中は「美優が好きだ」と言った亮平の言葉がぐるぐると回っている。
もちろん、亮平は嘘をつくような人間でない。そのことは私が一番よく知っている。
しかし・・・

「美優は何が信じられないんだ?」

私を寝かせた後ベッドのすぐ隣に膝をつき、息がかかりそうな距離で私を見る真剣な眼差し。

「だって、亮平は社長の息子で御曹司。ゆくゆくは会社を継ぐ人間なのよ。家柄も良くない平社員の私とでは釣り合うわけがない」

そう、私と亮平では住む世界が違いすぎる。

「家柄?一体いつの時代の話だよ。確かに俺はNAGASIMAを継ぐ人間だ。そのために自由が効かないことだってある。でも、そのことと長嶋亮平個人の生活は別だ」
「そうかもしれないけれど・・・ほら、亮平は仕事もできるし、見た目だっていいし、女の子からもモテモテでしょ。私なんかが釣り合うとは思えないのよ」

ちょっと噂が立っただけでも嫌がらせを受けたのに、本当に恋人になったらと考えるだけで恐ろしい。

「仕事ができて見た目がいい男のどこが不満なんだ?それに、美優だって、自分が気づいていないだけで男子社員には人気があるんだぞ」
「それは私が話しやすいからでしょ。みんな私のことを女だなんて見ていないわ」
「そんなことはない。美優は自己評価が低すぎだ。それにほら、石田には告白されただろ?」
「それは・・・」

上手に話をすり替えられている気がしなくもないが、言えば言うだけ説得されて行く気がする。
考えてみれば、優秀なビジネスマンである亮平に口で勝てるはずはない。
その後、とにかく考えを整理する時間をくださいとお願いして、私はやっと一人になることができた。
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