チャリパイ11~時をかける森永探偵事務所~

『十文字さん、私が人間に近いというのは少し正確性に欠ける発言だと思います。
人間は、時々ミスをしますが、私はミスをしません。常に無駄の無い的確な判断を導き出すからです』


それを聞いた十文字は、両の眉を下げて笑った。


「ハッハッハ~これは手厳しいな♪
確かに計算能力、物理的な判断能力は、人間ではとてもコンピューターにはかなわない。
しかしね、人間には計算では弾き出せない『心』というものがあってね…時には、敢えて無駄なあがきをする事があるんだよ♪」


motherには、『心』というものがどんなものなのかが理解出来なかった。敢えて無駄な事をする道理など、自分のプログラムには存在しない。


『…ココロ…ですか?
それは一体、どんな定義から形成されるものなのですか?』


motherの質問に、十文字は困ったような顔をして答えをはぐらかせた。


「いやぁ、その質問に答えるには、僕はまだまだ人間的に修業が足らないかもしれないな…」


そして、顎に手を当ててしばらく考えたあとに、十文字はこんな言葉を発した。


「まあ、例えば……
『愛』とか『友情』
『思いやり』『絆』みたいなものかな……」





☆☆☆



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