桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
66

 
最後に飲んだ薬のせいか、酷く眠くて認知機能が半減している中で帰る道々、
俺は父親の運転する車の中でまどろみながら、母親が捲し立てる話を
薄ぼんやりと聞いていた。


退院後2~3日して体調も気分も少し落ち着いた頃、俺はどこかで
引っ掛かりを感じていたことを思い出した。

そうだ、母親の言ったあの言葉だ。


 担当医が桃の心情について語り、桃が俺を刺したのは俺たちのせいだと
言いきったところだ。

「なぁ、母さん、桃はその……どこが悪くて病院にいたんだ? 」

「……」

母親が側にいる父親の顔を見た。


「もう今更だ、話しておいてもいいだろう。
桃さんな、精神病院に入院してたんだよ。

お前と離婚できないことが原因で精神を病んでしまい、それであんな風な
事件を起こすまでになってしまったそうだ。
心を病んでるんだそうだよ」


「その道の専門医の意見ってことか……」

俺が離婚を承諾しなかったばかりに彼女を追いこんでしまったんだな。
恵子から連絡があった時にちゃんと桃に相談するべきだったのに……。


俺は判断を大きく間違えてしまったことに、今更ながら気づかされた。
それにしても、もう他に道はないのだろうか、離婚する以外。


何もかもが後手後手にまわり上手くいかなかない俊は
深くため息をつくのだった。

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