桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
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その週の週末の土曜のこと。
その日もブランチと夕飯という2食コースで、18時という早い夕食だった。


「俊ちゃん、私、急いで片付けするから奈々子を
お風呂に入れてくれないかなぁ」

そう桃に言いつけられ、少々、俊は焦るのだった。
離れてくらしていた娘と一緒に風呂に入ったことなどなかったからだ。

自分はいいが、幼児とはいえ、すでに3才児とはいえない年齢だ。

娘が恥ずかしがったり嫌がったりしたら、一人で入らせて着替えを手伝う程度に
しておこうと思い、娘に訊いてみることにした。

「奈々子、お風呂どうする? 
お父さんと一緒に入るか、一人で入るか、好きにしていいよ。
着替えは手伝ってあげるからね」

「一緒に入る。はじめてだね、むふふっ」


「そっか。じゃあ、お父さんの背中洗ってな……」

「時々お母さんの背中洗ったりしてるから、だいじょうぶだよ~。オッケー」


こんな風にして楽しい親子の入浴タイムを過ごし、この後は桃が奈々子に
添い寝をし、早々と寝かしつけた。


そしてこの後、桃も風呂場へと消えた。


リビングでTVニュースを見ていると桃が風呂から上がってきて
麦茶を入れたコップを持って俺の前に座る。


「何見てるの? これから何かいい番組でも始まるの?」

「いや、ニュースをなんとなく見てただけ……俺、あまりドラマとかは
見ないからね」

「そう? 前からそうだったっけ?」

「そうだね、全然見ないってわけじゃないけど、社会人になってからは
大河ドラマを見る程度かな。
まっ、気にいった作品の時だけな。大体は将棋と囲碁だな」


「そっか、あたし、そういうのも覚えてないんだぁ~。落ち込むぅ~」

「気にしなくていいよ。社畜なんて時間がなくてみんなこんなもんさ」

「俊ちゃん、今、私たち二人きりだね」

「ん? 奈々子が……」

「ううんー、もう。起きてる人間のことよ」


「あぁ、そうだね、そっか」

「どっちが早くお布団に入れるか競争しよっ」

「ヒェ~ッ」


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