桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
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 奈々子の幼稚園の送迎は、母が頑張ってくれている。

調子のいい日にはゆっくりとだけど慎重に歩いて休み休み食事の下ごしらえを
したり、洗濯機を回したり、とにかく脚の調子を見て日々の生活を焦らず脚に
なるべく負担を掛けないようにしてマイペースで過ごすことを心掛けるようにした。


そんな生活にも少しずつ慣れ一か月が過ぎた頃、私は再度、整形外科を
訪れた。

本当にここの医院の先生には呆れる。

看護師に案内された部屋には先生の椅子と患者の椅子とがあり、朝一で
受診する私が先生を待つこと5~6分。

カーテンを開けて先生が奥の部屋から診察室へ入室。
『宜しくお願いします』と挨拶した私に無言の間。

『この人何も言わず、無言で診察にもなってない診察という名目だけで
診療報酬の点数をもぎ取ってこの時間を終わらせるつもりなのか?』

焦れた私は訊いても訊かなくてもすでにどうでもよい境地ではあったが、
社交辞令として「まだ痛みを感じる時もあるのですが、どうすれば……」
と話し掛けた。


「痛みの元の股関節を手術しないと治らないからね。
しないのなら、痛み止めと湿布薬出しておくから」

『いえ、痛み止めは腐るほどあるのでいらないから』
そう言いたかったがそれを許さない雰囲気があったため、私はこの言葉を
飲み込み、処方された薬を近くの調剤薬局で受け取り母の運転する車で
帰った。

医師免許と医院を開業しているからといって、あんなので診察したことにして
点数をつけて収益にするんだ。

患者に対するやさしさなど、微塵も窺えず……最低~!
あんな全く患者の気持ちに1mmも寄り添えない医師など必要ないよっ。

この日、次に掛かる病院は別のところにしようと決意した。
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