桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
94 淡井恵子の番外編4    

美晴は短期大学卒入社なのでこれまで恵子とは4年一緒に働いているが、
特段仲が良いというわけでもなく、かといって牽制しあう仲というのでも
なかった。

社内での付き合い方でいうと、ほどほどの良好な関係ではないかと
恵子の方では考えていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇


或る日のこと、残業帰りに恵子は初めて新井から
「お腹すいてない? 駅前で何か食べて帰りませんか」と誘われた。

続けてその日を境に残業の或る日にはお茶だったり食事だったりと
新井と二人の時間を過ごすことが増えていった。

元来の肉食系恵子なら二度目に誘われた日に自分からふたりの関係を
もっと深く進めていただろうと思う。

これまでの相手は友達から奪い留飲を下げることが目的になっていたため、
迷うことなく目的のため猪突猛進でことを進めていったものだが、今回は違う。

新井のことが好き過ぎて自分からなかなか積極的に出られないでいた。
恵子は万が一にも断られるのが怖かったのだ。


それに交際を申し込まれたわけではないが、相手から誘われて何度か一緒に
食事などをしているのだから、この先交際をを申し込まれる可能性が全く
ないわけでもなく、できれば新井のほうから交際を申し込まれたいと
願っていたので、恵子はそれを心密かに待っていた。
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