戦略的恋煩い
「誰でもいいわけじゃない。小夏だから付き合いたいって思ってる」

「確認するけど、結婚詐欺とかホスト……とかじゃないよね。私お金持ってないよ」


 黙っていた私を説得しようと真剣に私を見つめる律輝。ところが頭では分かっているのに、口から心無い一言が飛び出た。

 待って、さすがに今の発言はない、取り消したい。一生懸命伝えてくれたのに詐欺師扱いとか信じられない。

 案の定律輝は無言でソファから立ち上がり、玄関に向かった。ついに私に呆れて家を出ていく気かと思って、慌ててソファから立ち上がって律輝に後ろから抱きついた。


「待って待って、ごめん!」

「何がごめん?素性が知れなくて不安なら俺の名刺あげようと思って」


 ところが律輝はなんとも思っていない様子で玄関に置いていた仕事用のカバンから何かを取り出した。確かに指先に名刺を挟んおり、怒ったわけではないのかと私は安心して強張っていた肩の力を抜いた。
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