熱の城
「えっ? あぁ……」
我に返ったように、タイガーは口を片手で覆って横を向く。
「『いってらっしゃい』って、あまり言われ慣れてなかったから、結構いいもんだな……」
そう言って、嬉しそうに笑うタイガーの顔が、とても意外だったから、不意打ちで胸の奥がギュッと苦しくなった。
「……」
『いってらっしゃいませ』なんて、いつも補佐なら言っている言葉なのに、鈴木主任が言われ慣れていないだなんて、どう言う事なんだろう?
もしかして、会社にあまりいないから? それとも、人がいない時間に出張に出る事が多いからだろうか?
「……」
『いってらっしゃいませ』なんて、専属になったから、嫌でもわたしから聞くだろうに。嬉しそうに笑うタイガーの顔が、頭から離れなくなりそうで少し困った。