神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
…それで。

「何で隠れてるの?」

「襲われたら困るからだ」

「そうなの?…そんなに強い?」

私でも勝てない?天使さんでも?

そういえば、ジュリスが言ってたよね。

冥界の生き物は、現世の生き物とは勝手が違うんだって。

だからあのお魚も、お魚のように見えて、実は巨人だったりするのかもしれない。

「強いか弱いかの問題ではない。相手をする時間が惜しいのと、それから…」

「…それから?」

「…罪の獣を倒すのは、俺の役目じゃない」

…??

あれ、罪の獣っていうの?

「とにかく、このままやり過ごす。少し静かにしておいてくれ」

「うん、分かった」

天使さんがそう言うなら、そうするよ。

幸い、人面魚さんは、あんまり目が良くないのか。

それとも、天使さんが不思議な力で私を守ってくれているのか。

人面魚さんは私達に気づかず、そのまま素通りして、深淵の中に消えていった。

「…。…よし、やり過ごしたようだな」

「あれが、罪の獣…」

私は人面魚が消えていった暗闇を、じっと見つめた。

「どうした?」

ほぇ?

「?何でもないよ」

「…そうか。それじゃ、目的の場所に行くとしよう」

目的の場所…?

「何処に行くの?」

「今でこそ、この場所は廃墟と化した海底都市だが…。かつては、栄えた水上都市だった」

そう言いながら、天使さんは案内してくれた。

暗闇の中を、ふわふわと漂うように。

しっかりと、私の手を握り締めたまま。

「だからこうして、たまに街の名残が見つかることがあるんだ」

天使さんは、不意に瓦礫の破片に手を突っ込み。

そこから、丸くて小さな石を取り出した。

「うわぁ…」

それは紫色に輝く、小さな宝石だった。

凄い。水の中なのに、はっきりと分かるくらいキラキラしてる。

「綺麗。ねぇ、これどうしたの?」

「だから、昔の名残だ。この辺りによく落ちてる」

ほんと?

ここ、ただの海の底だと思ってたけど、まさかお宝の山?

「他にもあるぞ。紫だけじゃなくて…」

「わー」

天使さんは、再び海底を浚って。

今度は、小さな青い真珠みたいな宝石を掘り当てた。

凄い、凄いよここ。宝石の山…ならぬ、宝石の砂場。

「それから、この地域にあった珊瑚の欠片が…」

「わー。わーわー。綺麗。見せて見せて」

「あぁ」

珊瑚の欠片、貝殻、どれもこれもピカピカキラキラと輝いている。

凄く綺麗。

「これ、勝手に持って帰っても良いの?」

「今この場所には、人間は誰も住んでいない。好きにすると良い」

「わーい」

収穫だ、収獲〜。
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