神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
すると、その時。

こんこん、と俺の部屋の扉がノックされた。

そして、外から俺を呼ぶ声が。

「ジュリスさん。突然済みません。今、良いですか?」

おぉ、すげぇ。

と、俺は妙に感動してしまった。

だって、ちゃんとノックしてくれるし、入る前に声をかけてくれるんだぜ。

ベリクリーデとは大違い。

こんな当たり前のことで感動するなんて。

普段、いかに俺がこの礼儀知らずの不法侵入者に悩まされているか、分かってもらえるというものだろう?

…って、感動している場合じゃないっての。

さっきの声からして、訪ねてきたのは…。

「おぉ、シュニィ…やっぱりお前だったか」

「おはようございます、ジュリスさん」

「おはよう」

さすがシュニィ。分かってるな。

やっぱり人の部屋を訪ねる時は、ノックと挨拶が基本。

聞いてるか?ベリクリーデ。お前に言ってるんだぞ。

「…あら?ベリクリーデさんもいらっしゃったんですね」

「やっほー」

訪ねてきたシュニィは、床に座るベリクリーデに気づいた。

あのな、ベリクリーデ。シュニィは一応、俺達の上司に当たる人物なんだぞ。

ましてや、お前はシュニィより年下じゃないか。

やっほーなんて挨拶、ふざけてるのか!と怒られても文句は言えない。

…はずなのに。

「ふふ、おはようございます。ベリクリーデさん。今日もジュリスさんとご一緒だったんですね」

にこやかに微笑み、挨拶を返すシュニィ。

…お前さんは、心の広い上司だよ。

「…?ベリクリーデさん、失礼ですが手に何か…。まさか、お怪我ですか?」

えっ?

シュニィが何かに気づき、慌ててベリクリーデの手を取ると。

「これ…絵の具?」

「うん、絵の具だよー」

ベリクリーデは、両手のあちこちに絵の具をくっつけていた。

何なら、絵の具がついたその手でほっぺたまで触ったらしく、顔にまで絵の具がついてる。

不器用だからな、こいつは…。

それがまた、赤い絵の具をつけてるもんだから…ぱっと見、血に見えなくもない。

それで、シュニィもあわや怪我をしたのかと誤解したのだろう。

ほんとごめん。それただの絵の具。

「そ、そうでしたか…。済みません、私、変な誤解をしてしまって…」

「いや…シュニィ、お前は悪くない」

こんな朝っぱらから、顔に絵の具くっつけてるベリクリーデが悪い。

しかし、当のベリクリーデは全く悪びれることなく。

「見てー、シュニィ。これ可愛いでしょ」

と言って、さっき俺が作ってやった松ぼっくりのフクロウを、シュニィに見せた。

「まぁ、それ…松ぼっくりですか?可愛いですね」

「ジュリスが作ってくれたんだよ。おこめちゃんって名前なの」

ドヤ。

おい、やめろ。たかが松ぼっくりくらいでドヤるな。

「そうだったんですね。ジュリスさんは器用ですね」

「でしょー?」

ドヤ。

やめろって。何故お前がドヤる?

「今ね、クリスマスツリー作ってるんだよ」

「まぁ、可愛い。アイナが好きそうです」

「そっか、シュニィ子供がいるんだよね。はい、じゃああげるー」

「あら。ありがとうございます、ベリクリーデさん」

…なんかシュニィ、手慣れてんな。

さすが二児のお母さん。子供(ベリクリーデ)の扱いを分かってる。
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