神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
しかし、シュニィの部屋に向かう途中に、一悶着起こる。

「おっ…」

「…なんだ。お前らも来てたのか」

女性隊舎に入ろうとしたところに。

偶然、俺達は同僚のジュリスと鉢合わせした。

…しかも、めっちゃ不機嫌ヅラをしたジュリスと。

お前さん…そんな顔してると、イケメンが台無しだぞ。

「ジュリスさんがこういう顔をしているということは…」

「…あぁ、間違いないな」

ベリクリーデちゃん関連だな。そうに違いない。

そして、案の定ジュリスは。

「丁度良かった。…お前ら、今日ベリクリーデを見なかったか」

と、俺達に聞いてくるではないか。

ほらな。言った通りだろ?

「いや…見てないけど。ルイーシュは見たか?」

「いえ。俺も見てないです」

だよな?

今日は、まだ姿を見ていない。

まだ部屋で寝てんのかね…?だとしたら、随分なお寝坊さんだが。

「そうか…。それじゃ、やっぱり部屋に探しに…」

と、ジュリスが言いかけたその時。

「あ、ジュリスだ。ジュリス〜」

噂をすれば、何とやら。

探しに行くまでもなく、ベリクリーデちゃんが自ら姿を現した。

…何故か、全身血まみれで。

その姿を見て、俺もルイーシュも、そして誰よりもジュリスが。

飛び上がるほどに驚いて、慌ててベリクリーデちゃんに駆け寄った。

「ベリクリーデ…!?お前、一体どうしたんだ…!?」

「ほぇ?」

全身血まみれなのに、何故か全然痛がる様子もなく、いつも通りぽやんとしているベリクリーデちゃん。

い…痛くない、のか?

あんなに怪我してるのに…。

…いや、待て。

俺はその時、とあることに気づいた。

ジュリスも、どうやら同時に気づいたようだ。

「お前…な、何の血をつけてるんだ…?」

ベリクリーデちゃんは血まみれだが、しかしそれはベリクリーデちゃん自身の血ではなかった。

それどころか、人間の血の匂いじゃなかった。

それよりも…もっと獣臭いような匂いが…。

…って。

「ベリクリーデさん、何背負ってるんですか?」

と、ルイーシュが尋ねた。

背負う?

よくよく見たら、ベリクリーデちゃんは背中に何かを背負っていた。

リュックかナップザックかな?と思ったが。

そんな可愛いものじゃなかった。

「それなん…。…って、ふぇあ!?」

俺は、思わず奇怪な叫び声をあげてしまった。

誰でもそうなるだろ。

…死にたてほやほやの、イノシシの死骸を背負っているのを見たら。

そう。

ベリクリーデちゃんが背負ってきたのは、なんと、死んだイノシシだった。

30キロの米袋くらいありそうな、でっかいイノシシ。

…イノシシ担いで歩いてる女の子、俺は人生で初めて見たよ。
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