神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
こんにちはクロティルダ編2

sideジュリス

ーーーーー…その日、いつも通り…と言うのは非常に悔しいが。 

いつも通り、ベリクリーデが俺の部屋にやって来た。

…しかも、早朝に。

俺はその時、まだベッドでぐっすり眠っていた。

夢を見ていた。

夢というのは奇妙なもので、現実では絶対に有り得ないようなことでも、夢の中でなら起きる。

という前提を踏まえて、驚かないで聞いて欲しい。

今朝、俺の見た夢の内容。

ベリクリーデの顔をした、大量のヤドカリに襲われる夢だった。

…今、馬鹿にして笑っただろ。

今夜、ヤドカリに襲われる夢を見る呪いをかけてやるからな。

この悪夢のせいで、俺は最悪の気分でうなされていた。

「うぐぐ…。やめろ…」

…丁度、その時。

「ジュリスー。来たよ」

現実で、ベリクリーデが俺の寝室にやって来た。

ちょこちょこと、ベッドの横までやって来て。

うなされる俺の寝顔を、じっと覗き込んだ。

「ジュリス、難しい顔してる…」

「うぅ…やめろ、来るな…ヤドカリーデ…」

「知らない人の名前を呼んでる…」

ベリクリーデは、俺の肩を揺すった。

「ジュリス。起きよー。朝だよ」

「う〜…」

「…うなされてる…。ジュリス、可哀想…」

と言って、ベリクリーデはしばし、その場で考えた。

うーん、と。

「どうしようかな…。どうしたら、ジュリスを助けてあげられるかな…」

「…」

「うーん…。…あ、そうだ」

良いこと思いついた、とばかりに。

ベリクリーデは、ごそごそ、と俺のベッドに入ってきた。

毛布を捲りあげて、あろうことか、眠っている俺の横に添い寝し。

「よしよし、大丈夫だよジュリス。私がついてるからね、大丈夫大丈夫…」

などと言いながら、俺の頭や髪や顔を、ベタベタと撫でてきた。 

…その感触で、俺は夢の世界から、現実に導かれた。

「…ん…?」

「よしよし。よしよし、良い子だねジュリス」

…何だ、この声は。

しかも、誰かが俺の頭を撫で回しているような感触が。

いやまさか。俺は一人でベッドに入ったはずで。

隣に誰かいるはずはない。きっと気の所為だ。変な夢を見てしまった後遺症だ。

そうに違いな、

「ぼうや〜は〜よいこだ〜♪ねんね〜しな〜♪」

…この、間の抜けた歌声。

間違いない。これは聞き間違いなどではない。

俺は、即座にガバッ、と起き上がった。

その横には、予想通りの人物がいた。
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