神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
一階に住むおしゃべりおばさんと別れた後。

俺はベリクリーデと共に、ここから一番近くにある図書館に向かった。

本当は、王都セレーナにある王立図書館に行きたかった。

でも、さすがに今からそこまで向かっていたら、辿り着いた直後に閉館時間になってしまう。

…それに…こういう調べ物をするには、地元の図書館の方が誂向きだろう。





「よし…。調べるぞ、ベリクリーデ」

「わー、ジュリス見て。本がいっぱい〜」

「おい、こら。ちょろちょろすんな」

初めて来る場所に、目的を忘れて大はしゃぎのベリクリーデ。

図書館では静かにな。静かに。

寂れた図書館であるらしく、夕方の時刻なのに人はとても少なかった。

それでも、ベリクリーデにとっては楽しい場所に見えるらしく。

「あ、見てジュリス。絵本〜」

「こら。絵本に飛びつくんじゃない」

表紙にうさぎが描いてある絵本に夢中。

かと思えば。

「あ、見てあっち。『猿でも分かる!幽霊の呼び方』だって」

「あのシリーズは読んじゃ駄目だって、前も言ったろ!」

それに、幽霊の呼び方って。

いちいち呼ばなくても、今住んでる部屋に出てくるじゃん。

「ねぇねぇジュリスー」

「分かった分かった。調べ物が終わったら、好きなの読んで良いから」

「わーい。じゃあ調べる」

よろしい。

ったく、相変わらず子供みたいなヤツだ。

ようやく大人しくなったベリクリーデを連れて、俺は図書館のカウンターに向かった。

そこには、暇そうにあくびを噛み殺している司書さんがいた。

そこに俺が向かうと、「お、珍しく客が来た」とばかりに、興味深そうに頭を下げた。

「こんにちは。どうされましたか?」

「こんにちは。…済みません、ちょっとお願いがあるんですが」

「はい、何でしょう?」

さて。上手い言い訳を考えないとな。

「実は…自分達は雑誌記者なんですが、この地域で昔、一家心中があったと聞いて…。その事件を取材したいんです」

「えっ。記者…さん?」

ごめん。まぁ嘘なんだけど。

あとベリクリーデ。こてんを首を傾げるんじゃない。嘘がバレるだろ。

そうでも言わなきゃ誤魔化せないだろ。まさか「事故物件の調査をしてます」とも言えず。

「その心中事件…放火だったそうなんですが、事件に関する文献を探してるんですが、何かご存知でしょうか…?」

「えー…っと、ちょっと…待ってくださいね」

カウンターの司書さんは、一旦奥に引っ込んだ。

どうやら、奥の書庫で本を整理していた同僚に、相談に行ったらしい。

しばらく、そのまま待っていると。

「お待たせしました、お客様…」

「あ、はい」

奥で整理をしていた、少し年配の男性司書さんがやって来た。

「この辺で起きた心中事件について、ですね…?ちょっと、自分にも覚えがなくて…」

「あ…そう、ですか…」

「少し時間をいただけますか?該当の記述が無いか、地元紙を調べてみます」

「ありがとうございます」

図書館、人が少なくて助かった。

そこまでしてもらえるとは。大変有り難い。
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