空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「俺からあなたに連絡しても、あなたは見てくれないと思ったんです。あなたはきっと、俺に頼るまい、迷惑をかけまいとするでしょうから」

 彼の言葉に、体がぴくりと反応する。連絡を取らなかった理由もバレていた。彼からの連絡がなかったのは、凌守さんなりの配慮だったのかも知れない。

「だけど今日、どうしてもあなたに伝えなければならないことがあります。だから、東海林さんにお願いして呼んでもらいました」

 凌守さんはそう言うと、自身の出てきた扉の中へ私に入るよう、手で指し示す。

「ここでは寒いですから。中へ、どうぞ」

 彼は私に、何を話すのだろう。麗波のことだろうか。

 聞きたいけれど、聞きたくない。不安で心臓がおかしなふうに鳴る。
 だけど、促されては入らないわけにはいかない。私はゆっくりと、扉の中へと足を踏み入れた。
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