空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 凌守は三人の姿を捉えた。

 女性が凌守を振り向く。御船伊の娘、麗波だ。
 その隣にいるのは、麗波の婚約者、与流。部屋の奥にいる初老の男性は、ここ数週間で何度も資料で目にした人物。御船伊重工の社長で間違いない。

 三人は窓のない控室のような小さな空間にいた。与流だけは立っているが、麗波と御船伊は俯き、パイプ椅子に腰掛けていた。

「船が浸水しています。ここにはまだ流ていませんが、じきに海水が流れ込みます。早く避難を――」
「ほら、避難しよう。行こう、麗波さん」

 凌守の声を遮り、与流が麗波の腕を引く。しかし、麗波はピクリとも動かない。

「嫌よ。私はここで死ぬの。ね、お父様」
「ああ」

 低く威厳のある声。彼の表情からは何も読み取れず、凌守は余計に苛立った。
 すると与流が凌守にすり寄り、懇願する。

「助けてくださいよ! あんた、俺たちを助けに来たんでしょう」

 しかしすぐ、麗波が口を挟んだ。
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