空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む

5 私たちをつなぐブルーガーネット

 私は職場、アルカディアポートホテルの大ホールで救助者に毛布を配っていた。凌守さんと別れたあと、職場からの応援要請があったのだ。

【遊覧船の水没事故が発生。乗員乗客を海上保安庁の巡視艇が桟橋まで誘導中。ホテル内での対応をお願いしたい】

 凌守さんの緊急出動はこれだと確信したし、何より今日はパーティーの日。乗船されているのはほとんどがこのホテルの宿泊客だ。
 使命感に駆られホテルへと走った私は、こうして今、宿泊されていない乗客乗務員の対応に当たっている。

「御船伊社長、お嬢さんと取り残されているらしいわ」
「助かるかしら」

 そんな会話が聞こえる。ちらりと目をやると、会話の主二人は、スマホでテレビの中継映像を観ていた。これはどうやら、上空のヘリコプターから撮影しているらしい。

 画面に、海上保安庁のヘリコプターから、船に降りるドライスーツの機動救難士が一人見えた。彼は颯爽と二階のデッキ部分に降り立つと、素早く船内へと姿を消す。

 あれがきっと、凌守さんだ。
 そう思うと、私も頑張らなくてはと思えてくる。彼は、船内で救助を待つ人を助けるため、身を挺して頑張っているのだ。
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