空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 それから一ヶ月。なってしまったことは仕方ないと心を入れ替え、このホテルでの残りの業務を、何とかこなした。

 提案予定だった秋のプランは信頼できる後輩に託し、引っ越しの準備も進めた。新設されるアルカディアポートホテルの近くに社宅も竣工しているらしく、そこに引っ越すことが決まったのだ。

 引っ越しの荷物を業者に引き渡すと、私はあの街へ向かう前に、母のペンダントをきゅっと握った。
 海の近くに行くのは、苦しい。だけど、めげていてはダメだ。

『あなたなら、きっと今日を乗り越えられる』

 頭の中で、あの日、私を助けてくれた彼の言葉を繰り返していた。
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