空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 きっと、母を最後に見たのはこの辺り。

 私は立ち止まり、柵の向こうに広がる海の向こう側を見た。あの頃と変わらず、空港から飛び立つ飛行機の光が次々に見える。

 柵の向こうには防波ブロックが置かれ、波が寄せては返している。真っ黒なそれを見て、私は思わず息を呑んだ。

 ホテルのオープンまではあと二ヶ月。それまでに、海が苦手なのを克服したい。そして、ホテルマンとして最高のサービスを提供したい。

 だけど、海を見ていると胸が嫌なふうに鼓動を打つ。海はやっぱり怖いし、苦手だ。

 私はポケットに忍ばせていた母の形見のペンダントに触れ、そのまま拳を握った。
 まさかそれが、彼との再会につながるだなんて思わずに。
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