空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「あなたは海で溺れた経験をしてもなお、前を向いて海を好きになろうとしている。そのことが、俺は嬉しいんです。だから、俺の負担だとか、そういうふうには思わないでください」

 彼は私に笑みを向けた。

「嬉しいんです。あなたが、前を向いてくれることが。だから、海上保安官として、あなたをサポートしたいんです」

 じっと見つめられ、私は黙った。彼の厚意を、受け取ってもいいのだろうか。
 考えている間にも、彼は私に差し出していた右手をさらに私に近づける。

「仕事の合間になりますが、海の近くを散策したり実際に船に乗ってみたり。そういうことでなら、あなたをサポートできます」
「本当にいいんですか?」

 思案顔で聞くと、彼はこくりと笑顔で頷く。

「あなたが海を好きになって、あなたの接客を受けた人が皆、海での楽しい思い出を作る。そんな連鎖が生まれたら、俺だって嬉しいですし」

 嬉しいしありがたいけれど、でも本当にいいのだろうか。

 考え、ちょっとだけ右手を上げてみる。だけどやっぱり申し訳ないと、そっと手を引っ込めた。
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