空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「本当は、観光客にも来てほしいんだけどね。飲食店はあっちのショッピングモールにみーんな持ってかれちゃうよ」

 店主さんが、水の注がれたグラスを私たちの前に置きながら言った。

「このお店の写真、撮らせていただいてもいいですか?」

 私は店主さんに聞いた。彼が首をかしげたので、私は続ける。

「私、今度オープンするアルカディアポートホテルのコンシェルジュなんです。宿泊されるお客様のニーズに合わせた滞在プランを提案する仕事なんですけど、ここのお店も紹介できたらと思いまして」

 コンシェルジュとして、私が大切にしていることは、自分の目で見て、感じて、満足いくものをお客様に提供することだ。そのほうが、自信を持ってお客様におすすめできる。
 どうかな、と様子をうかがっていると、彼は優しく微笑む。

「もちろん、OKだよ。アルカディアポートホテルって、駅の向こうにできる大きなホテルだよね。紹介してくれるなら、うちも嬉しいよ」

 店主さんがそう言ってくれたので、私は店内を撮影させてもらった。席に戻り、メニュー表も写真に残す。
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