空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 それからしばらくの準備時間の後、実践訓練が始まった。
 私はコンシェルジュとして、ホテルのフロント横のカウンターで作業をしていた。すると、フロントに一報が入る。

『アルカディアポート沖にて、中型パーティー船が座礁。海保が現場へ急行中。乗客乗員七十二名の一時受け入れを御ホテルにてお願いしたい』

 訓練開始の連絡を受け、あわただしくフロントが動き出す。私は桟橋からの誘導を命じられ、同じ役のホテルマンと共に【案内役】のゼッケンを身に着けホテルを出た。

 いつもは人のまばらなマルマロスロードに、今日は見物人やメディアがたくさん詰めかけていた。
 例年、この訓練は普段は見ることの出来ない海上保安庁の訓練を間近で見られるとあり、観光客にも人気なのだそう。

 私たちは見物人の間を縫い、桟橋への道を作った。これは、救助された人々の避難動線になる。

 やがて道が出来上がった頃、上空からパタパタとヘリコプターの飛ぶ音が聞こえた。見物客やメディアにつられ、私もヘリコプターが飛んでゆく先を見る。
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