尚美~最後のレディース
「…あれ?」
エンジンを掛けようとすると、ハンドルの右側に付いてあるはずのスターターが見当たらなかった。
「どした?」
「いや、スターターが無い」
「キック付いてるよ」
「あ、本当だ。
英二の野郎…何の説明もしないでサッサと帰りやがって」
キーボックスをONにし、ニュートラル・ランプが緑色に光ったのを確認し、私は右足に掛けたキックペダルを勢い良く下に降ろした。
「おお〜掛かった」
「行くよ、真弓」
「ナンバー曲げないでいいの?」
「あ、忘れてた。
とりあえず今日はいいや。
後で英二達にステ上げしてもらう」
廃車とは言え、借り物の単車のナンバーを手でグニャッと曲げる訳にもいかず、ナンバーは後で、綺麗に上げ下げが出来る様に英二達に直してもらう事にし、
私達はヘルメットを被った。
「行くよー」
「おーう」
クラッチを握り、ギアをカチッと下げ、私は白いRZを発進させた。