桐田家のヒミツゴト~秘密の契約結婚からはじまる恋~
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管理棟のガラス扉から中を覗くと、朝士くんが受付のカウンターの椅子に座って、そわそわしているのが見えた。
「い、いらっしゃいませ……?」
扉を開けると、青い顔のまま下を向いて、朝士くんがそう口にする。
「朝士くーん、ちゃんとお客さんの顔を見ること」
「なんだよ、彩里かよ~」
相手が私だと気がつくと、朝士くんはほっとしたように姿勢を崩し、椅子に足を乗せていつもの調子に戻る。
「なんだよ、冷やかしに来たのかよ?」
「ちょっとね」
人との関わりが苦手で、接客なんてやりたくないと言っていたのに。
不思議な変化なもので、朝士くんは最近、少しずつこうして人の前に立つことを覚えようとしている。
「少しでも彩里の横に並べる男にならなくちゃな……」
「ん?何か言った?」
「なんでもねーし! あ、カフェの方はどうだ?」
なにやら独り言を言った朝士くんが、慌てたように話題を変えた。
「うん、まーぼちぼち。テイクアウト中心だったかな」
「ふーん。茉昼は柊の迎え?」
「うん、そうなんだけど……。なんか、茉昼ちゃん最近、保育園で友達ができたとか話しててさ」
「あー、男だろ?」
「え?」
「茉昼、男キレないもんなー」
「えっ……、そうなの?」
「柊が生まれてからは結構大人しかったけどな。でも、あいつの周りマジすごいから」
「へ、へぇ……」
さっきまでの茉昼ちゃんの顔が頭に浮かぶ。
やっぱり、朝士くんも知ってるんだ。
「じゃあ、智夜さんも知っ……」
知ってるの──?そう聞こうとした時、カランと管理棟の扉が開いた。


