桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「茉昼、これ、いつオープンできそう?」
眉を下げた智夜さんが苦笑した。
建物の中は段ボールでいっぱいで、木片や工具、ペンキ用品が散らばっている。
端には手作りのテーブルと椅子もあり、机の上には設計図が何枚かあって。思ったより、本格的に準備しているみたい。すごいなーと感心してしまうけど。
確かにいつ片付けが終わるのだろうか……。
「えー、だって終わんないんだもん。掃除と苦手な上、アクシデントもあったしさ」
茉昼ちゃんが唇を尖らせて私をチラリ。う、私の怪我のせいだよね……。
「茉昼ちゃん、ごめんね……」
「違うよ、彩里ちゃんが悪いんじゃない!朝士が諸悪の根源だから。はぁ、全くあいつは問題児なんだからぁっ」
「まぁまぁ、朝士も手伝ってくれてるんだから」
智夜さんが茉昼ちゃんの頭にポンと手を置き、なだめるように優しく撫でる。
前に茉昼ちゃんも言ってたけど、智夜さんは本当に誰にでもこんな感じなんだ──。
「気分屋でしょー?やる時はやるけど、違うことに目がいくと、すぐどっか行っちゃうんだもん!」
「朝士は自由人だからな」
茉昼ちゃんがムッと頬を膨らませると、智夜さんはクスクス笑った。
「ねぇ、彩里ちゃん、ここすごいでしょ?片付いてなくて」
「昔、コテージとして使ってたんだけど、いつの間にか物置になっててさ。リメイクしてカフェにする予定なんだ」
「全然進んでないんだよね」
「本当にな、いつ終わるのやら……」
2人が同じタイミングで大きな溜め息をつく。すぐに茉昼ちゃんが顔を上げ、思い付いたように口を開いた。
「怪我治ったらさ、2人で女子キャンやろうね!お酒飲んで乾杯しよ!」
彼女が私の腕に手を絡め、ピタッとくっついきて。
女子キャンなんてやったことないけど、楽しそうだな、なんて──。
「えー、楽しそう」
「絶対、楽しいよ!」
そう言って、茉昼ちゃんはにこにこして、私の手をぎゅっと握って声を弾ませた。
「いいね。俺もまぜてよ」
「お兄ちゃんは駄目~、女子会だもんね!」
「それは、ずるいな」
「男子禁制~、あ!でも朝士は勝手に夜乱入してきそう!」
「はは、確かにな」
「3人とも、仲良しですね」
心が和むな。私もつられて笑ってしまった。
もしお兄ちゃんや弟がいたら、こんな感じだったのかな。
「あ、柊と朝士、帰ってきた!」


