桐田家のヒミツゴト~契約結婚したはずが、義弟との距離が近すぎる~
「あ、そういえばカフェで思い出した。昨日の夜、茉昼がカフェの方も見に来て欲しいって言ってたよ」
「……そうですよね」
──キャンプ場内にカフェをオープンする予定で、妹の茉昼と働く人を募集しているんですが…
智夜さん達と出会った頃、そう言われたのを思い出す。
私がここに来た理由の一つでもある。働く場所。
骨折しているから、すぐには無理でも、お店の方には顔を出さなくちゃね。歓迎会もしてもらったし。
自然と口許が緩んだ。
「一緒に行く?」
「え?智夜さん、忙しくないんですか?」
「うん、今日は結構暇でさ」
外に出ると、ムワッと湿った空気が肌にまとわりついた。暑い。じわりと汗が滲んだ。
舗装されていない土道には砂利が敷かれていて、松葉杖をつくたびに、ジャリッと音がした。
「彩里ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です」
すぐ横を歩く智夜さんの額にも汗は滲んでいるのに、なぜかやけに爽やかなのは何でだろう。
少し先に進むと、コテージ風の一軒家が建っているのが見えてきた。
テラスもついていて可愛らしい外観だけど、結構古いのか、外側の壁がボロボロだ。ガラス越しに見える中も荷物がいっぱいで片付いていない。
も、物置小屋……かな?
石段を上がり、木製の扉を開けると、冷たくて気持ちいい空間が広がった。
はぁ、冷房効いてて、生き返る。
「あ、彩里ちゃん、……お兄ちゃんと一緒に来たんだ」
段ボールを運んでいる茉昼ちゃんが、私たちに気が付いて口を開いた。
「道案内してもらったんだ。私、ほら方向音痴だし」
「手伝いきてくれたの?ありがとう!」
「あれ、柊くんは?」
キョロキョロと見渡すと、茉昼ちゃんが軽く笑って声をあげる。
「えー、朝士とどっかで遊んでんじゃない?」
そっか。確かに、柊くんいたら片付けにはならないだろうけど。
柊くんってまだ3歳になってないよね。
毎日、朝士くんといるイメージだけど、ママーって騒がないのかな。
でも、朝士くんなら慣れてて本気で遊んでくれそうだし、任せられるのかな。