クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
 ノキアが廊下に出ると、追いかけてきてくれたのはデュランだった。

「ノキ……王女様」
 その姿を見た途端、安心したのか、ノキアは軽く眩暈を覚え足元がふらつく。デュランに支えられる形になったが、そこへセイラがやってきた。
「デュラン、あなたは客将。軽々しく王女に触れてはダメよ」
「すみません、ふらついていたものですから」
「そうですか、感謝いたします。王女様、一旦お部屋に戻りましょう」
 セイラに支えられ、ノキアは部屋に戻った。
 
 部屋にふたりきりになると、ノキアは事の顛末を説明した。セイラが神妙な顔をしている。

「ごめん……国際問題に、なるかな?」
「ううん、大丈夫よ。すっきりしたわ。これで少しでも距離を置けるなら、それでいいし……」
 セイラは笑顔でノキアに抱きついたが、その表情はどこか寂しそうだった。

「本当にありがとう。ノキアがこの町に来てくれて、出会えて、本当に良かった。わたしたち、本当の友達になれるかしら……?」
「ああ、本当の友達だ。入れ替わりは、もうゴメンだけどな」
「なーんだ、先に釘を刺されちゃったか」
 セイラは、ぺろっと舌を出した。

「さて、パーティーも終わったことだし、入れ替わりはそろそろ終わっていいかな?」
 ウィッグを脱ごうとするノキアを、セイラが止めた。
「あら、まだよ。言ったでしょ? 『一日体験』だって」
「えええええ……」

 二人の笑い声が部屋に響く。
 生まれも育ちも異なるが、同じ波長を見つけたかのように、自然と心が通い合うようだった。
 パーティー終了後、セイラの父親である国王陛下から少々のお咎めはあったが、正体がばれることもなく、無事に一日が終わった。
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