『変人・奇人の時代』~異質学を究める女性准教授の物語~【新編集版】
 喜んだのも束の間、手土産のことを考えると気が重くなった。お菓子ではなくもっと気の利いたものを持っていきたいと考えたが、良いアイディアが浮かばなかった。ビールに合うツマミにしようかとも考えたが、料理が得意な奥さんが極上のツマミを用意されるはずなので、この考えは即座に却下した。

 ではどうする? 
 ビールのあとに飲むワインか食後酒はどうだろう? 

 しかし、その考えも却下せざるを得なかった。先見さんのお酒の蘊蓄を聞いていると、わたしが考えているようなお酒はなんでも揃っていそうだからだ。

 ん~困った。

 袋小路に入って抜け出せなくなってしまった。と諦めかけた時、不意にガムテープが貼ってあったスピーカーが脳裏に浮かんできた。
 ピンときた。そうだ、CDにしよう。
 どういうものがいいかと思いを巡らせていると、会話の邪魔にならない演奏がいいのではないかという気がしてきた。

 とすれば……、
 そうだ、ピアノトリオの穏やかなジャズはどうだろう? 
 悪くない。
 そうしよう。
 でもCDだけだと物足りないかもしれない。
 今回も散々ご馳走になるだろうから、それに釣り合うものを持っていきたい。

 では何がいいだろう? 
 チェコのビールを飲みながら楽しめるものは……、
 そうだ、DVDはどうだろう? 
 チェコの街並みや風景を映したDVDがいいかもしれない。
 それもナレーションのない字幕と音楽だけのものがあれば最高だ。
 
 早速ネットで検索を始めてしばらくサーフィンをしていると良さそうなものが見つかった。『プラハの四季』と『ドナウの調べ』
 前者がチェコで後者がスロバキアだから2つがあれば旧チェコスロバキア両方の旅情を満喫できる。即注文した。

 これで良し。

 準備は整った。

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