『変人・奇人の時代』~異質学を究める女性准教授の物語~【新編集版】
 1週間後、先見邸に伺う前に電話を入れた。体調を伝えるためだ。

「36度4分の平熱です。くしゃみも咳もありません」

 すると、元気な声が返ってきた。

「私たち夫婦も平熱です。同じく、くしゃみも咳もありません。お互い大丈夫なようですね。気をつけてお越しください」

 受話器を置いたあと、良かった、と独り言ちたが、気を緩めてはいけないと気合を入れ直し、しっかり不織布マスクをつけて、アルコール消毒して、玄関を出た。

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