バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます


その声を聞いて、思わず香耶はピクリと震えた。
忘れもしない、太田洸太郎の声だ。

「あなたの子よ」
「うそを言うな。中学生にだってわかるぞ。A型同士の親から、B型の子なんて生まれるはずがないって」

洸太郎のなじるような言葉に、沙織が泣きだしている。

面談室から洸太郎が出ようとしたのか、スライドドアが全開になった。
だが、すぐに沙織がスーツ姿の洸太郎にすがりついた。

「だって、だって、あなたが悪いのよ」
「もういい、離せ! 私は仕事に行く」

「あなたが結婚してくれなかったんだもの」

病院とは思えない、修羅場になってしまった。
看護師たちもどうしていいのかわからないし、中には香耶をチラチラと見てくる者もいる。

「子どもができたら結婚してくれると思ったのよ」

わああっと床に崩れ落ちて泣いている沙織を、洸太郎は汚いもののように見下ろしている。



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