ミーコの願い事 始まりの章 「ペンタスとヒトデ」
 窓から景色を眺めると、空の青さが頑張れと、エールを送っているかのようだ。
 今度は私の番だな。
 窓辺には、顔なじみの小さな植物が、私のことを見上げている。

「あなたも励ましてくれているのね」

 同じ時間を共有する友達のように、植物に話しかけていた。

「それにしても、あなた全然代わり映えしないわね、花も咲かなければ、葉っぱも成長しないし」

 疲れているように葉が少し萎れていて、みすぼらしい植物に同情のような気持ちを抱いていた。

「なーに? 土も乾いているじゃない。いーわ、この美人なお姉さんが、美味しい水道水を飲ませてあげるわ」

 あれ、水差しどこかしら?
 
 普段なら窓際に置かれ、植物達と並ぶかのように水差しが置いてあるのだが、今日に限ってその存在が消えていた。
 別の場所に置かれているのではないかと思い、水差しを探すべく給湯室に向かった。

「どうしたのですか」

 後を追うように現れた私に、蘭は不思議そうに観ている。

「窓辺の植物にお水あげようと思ったんだけど、水差しが……見当たらないのよ」

 言葉の途中で蘭は表情を曇らせると、申し訳なさそうに言葉を返した。

「水差しなら先週、窓から下の草むらに落としてしまい、探しに行ったのですが見つからなくて」

 その発言にひらめくと、落としたことよりも私の発言で笑ってもらいたく、うずうずしていた。
 先ほどの失態を挽回するべく、ユーモラスな返事で答えていた。

「見つからないなんて不思議ねー、フフッ。ひょっとしてバミューダトライアングルじゃないの」

 私が話すバミューダトライアングルとは、確か大西洋にある魔の三角地帯のことだ。
 そこを通る、船や飛行機は謎の消息を断つと言われ、怪奇現象ように取り扱われている。
 
 こんな博学的なジョークを言えるなんて、さすがね私って。
 きっと蘭も感心するように喜び、友達に使っちゃうんじゃないの?

 世界的に通用すると思われる冗談を話すと、蘭がどのような反応をするのか気になっていた。

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