メガネを外したその先に
「何それ、狡い」

「狡いって何だ」

「先生ばっかり、余裕で狡い」


落ち着かない鼓動に飲まれそうになり、感情がいっぱいになった私は、そのまま目の前にあった龍弥先生の胸に額を当てた。


「龍弥先生、好き」


卒業式の時より、何倍も好きだ。


「大好き」


膨れ上がった気持ちを先生がそっと抱き締めて受け入れてくれて、漸く私の長年の想いが報われた。
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