メガネを外したその先に
「テキストは?」


頭上から静かに、龍弥先生の声が降り注ぐ。


「…忘れました」


クラス中が注目している中で、誰かに取られたかもなんて言えるわけがない。


「隣に見せてもらえ」


そう言って、龍弥先生が離れていく。

幻滅されたかもしれないと思うと、もう何もかもが悔しくて悲しくて堪らなかった。


隣を一瞥すると、いかにも真面目そうなメガネ男子が渋々机を近づけてテキストを覗かせてくれた。
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