メガネを外したその先に
夜風に背中を押されながら歩く道。

我が家の少し手前で立ち止まった風間先輩の指先に力が籠り、先輩の顔を見上げる。


「希」


再び、先輩が私の名前を呼ぶ。


「キス、していい?」


いつかこの日が来ることも頭ではわかっていたのに、いざ真正面から切り出されると心が揺らぐ。

不安げに揺れた先輩の瞳に心が締め付けられて、私は先輩の指先を握りながら静かに首を縦に振った。


近づいてくる先輩の顔に、ぎゅっと強く目を瞑る。
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