君の手を
私は車をバックで自宅の車庫に入れ、祐太をだっこして家に入った。

「祐太何食べたい？」

「ひよこラーメン」

うっ！そう来たか。

私がこの前した手抜き料理が、さっそく息子の健全な食事スタイルに暗雲をたれこめさせてしまったらしい。

「チキンラーメンはこないだ食べたでしょ？ラーメンはまた今度ね」

「ちぇーっ」

あらあら、そんな言葉どこで覚えたの？

「今日はママの手作りハンバーグにしよう！」

「やったー！ハンバーグ！」

私は早速料理の下ごしらえを始めた。祐太も野菜を運んだりして一生懸命手伝ってくれた。

「焼くのはパパが帰ってからね」

「ハンバー…」

その時だった。何故か祐太の声が聞こえづらくなり、私はもう一度聞き返した。

「ごめんね聞いてなかったわ。祐太、今何て言ったの？」

祐太は、もう、ママったら！と大人のような口調で抗議した。

私のかわいい息子。

私は祐太を抱き締めたくなって、祐太の前にしゃがみこんだ。


目の前が真っ暗になった。

激しい頭痛が起きた。何なのだろうこの痛みは。頭が割れるように痛い。

「ママ？ママ！！」

祐太の声がまるで水中で聞いているかのように霞む。

…嫌だ！こんなの！誰か、助けて…


私はその場に倒れた。私の耳には、どこか遠くで、祐太が私を呼ぶ声が聞こえ続けていた……。
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