君の手を
次の日から私は朝早く家を出て、先ず佳祐の自宅に寄ってから美容院に行くようになった。
「美里、美容院でバイトしてるんだって?」
私と並んで歩きながらお父さんが言った。
朝早く出るようになって、家を出る時間がお父さんと同じになってしまった。
おかげで色々と毎朝質問攻めだ。
「どこの美容院だ?」
「朝日ヶ丘にあるの」
「何て店だ?」
「トゥルース、てお父さん来ないでよ!恥ずかしいから」
来られると大変なことになるかも知れない。
私は佳祐にいっぱい嘘をついている。
「無理するなよ、せっかくの夏休みなんだから、もっと遊ぶといい。お小遣いなら余分にあげてもいいんだぞ」
「ありがとう。でも楽しみと気分転換でやってるから心配しないでね」
お父さんと私はやがて駅について、じゃあねと言って二手に分かれた。
お父さんは大阪方面、私は神戸方面へ向かうからホームは反対側だ。
線路を挟んだ向こう側のホームに立つお父さんが見えた。お父さんは、空いているベンチを見つけて腰を降ろしていた。
背中が丸まって、何か弱々しいなあ。
考えてみれば、お父さんとここ何週間もまともに会話していない。
毎朝、駅へ向かう際に聞かれる質問でさえも生返事。
記憶が戻らない娘を、お父さんは心配しているのだろうな。
だけど不器用な性格のせいで、お父さんは質問でしか、私とコミュニケーションがとれない。
それはわかっていた。
もっと大事にしなきゃ…ね。
そう思いながら見つめていたお父さんの姿は、ホームに入ってきた普通電車に隠れ見えなくなってしまった。
私を愛してくれているお父さんとお母さん。私は彼らを今裏切ろうとしている。
雅人を傷つけたように。
雅人はあの日以来全く連絡してこない。
私はと言うと、そんな雅人が今度会うと何て言うのかが怖くて、メールも電話も出来ないでいる。
しかも今、私の頭の中は祐太のことでいっぱいだ。
私は何て罪深いのだろう。
私は何て卑怯なのだろう。
「美里、美容院でバイトしてるんだって?」
私と並んで歩きながらお父さんが言った。
朝早く出るようになって、家を出る時間がお父さんと同じになってしまった。
おかげで色々と毎朝質問攻めだ。
「どこの美容院だ?」
「朝日ヶ丘にあるの」
「何て店だ?」
「トゥルース、てお父さん来ないでよ!恥ずかしいから」
来られると大変なことになるかも知れない。
私は佳祐にいっぱい嘘をついている。
「無理するなよ、せっかくの夏休みなんだから、もっと遊ぶといい。お小遣いなら余分にあげてもいいんだぞ」
「ありがとう。でも楽しみと気分転換でやってるから心配しないでね」
お父さんと私はやがて駅について、じゃあねと言って二手に分かれた。
お父さんは大阪方面、私は神戸方面へ向かうからホームは反対側だ。
線路を挟んだ向こう側のホームに立つお父さんが見えた。お父さんは、空いているベンチを見つけて腰を降ろしていた。
背中が丸まって、何か弱々しいなあ。
考えてみれば、お父さんとここ何週間もまともに会話していない。
毎朝、駅へ向かう際に聞かれる質問でさえも生返事。
記憶が戻らない娘を、お父さんは心配しているのだろうな。
だけど不器用な性格のせいで、お父さんは質問でしか、私とコミュニケーションがとれない。
それはわかっていた。
もっと大事にしなきゃ…ね。
そう思いながら見つめていたお父さんの姿は、ホームに入ってきた普通電車に隠れ見えなくなってしまった。
私を愛してくれているお父さんとお母さん。私は彼らを今裏切ろうとしている。
雅人を傷つけたように。
雅人はあの日以来全く連絡してこない。
私はと言うと、そんな雅人が今度会うと何て言うのかが怖くて、メールも電話も出来ないでいる。
しかも今、私の頭の中は祐太のことでいっぱいだ。
私は何て罪深いのだろう。
私は何て卑怯なのだろう。