天色ガール【修正版】


◇◇



『……わかった。じゃ、また明日!』



 アメがそう言って理事長室を出たから、俺はこのうるさい奴と二人きりになった。



「おい千暁。さすがに強引すぎねーか?」



 勇が鋭い目で俺を睨む。


 本当は戸締まりの確認なんて必要ない。



「どうせアイツらの存在はすぐバレるんだし、出会いは早い方がいいだろ」



 俺の目的は、アメと屋上を溜まり場にする“彼ら”を会わせることだった。


 勇は小さくため息をつき、「なぁ」と呟いて。



「……アメさんが“天色”を抜けた理由って何だろうな」



 聞いても教えてもらえなかったんだろ?とすべてを見透かしたような目を向けてきた。


 アメが俺らにも、この高校への転入を勧めた“正人さん”にも隠すようなこと────



 と、なると。




「“アイツ”が絡んでるとしか考えられねぇな」




 ガンッ!!



 俺の言葉を聞いて、勇が近くにあったテーブルを拳で叩いた。


 ガラス素材だったせいか少しヒビが入っている。



「ッくそ、なんでアメさんは俺らを頼らねぇんだよ……!」



 勇が顔を歪め、悔しそうに叫んだ。


 自分の不甲斐なさに苛立っているんだろう。



 ……確かに、アメは俺らを頼らない。


 理由を聞けば、“これ以上みんなを巻き込めない”とか馬鹿なことを言うに決まってる。そんなこと気にしないで欲しいのに……。



 だけど、あいつが俺らに救けを求めることは、きっともう無いだろうから。




「屋上にいる“アイツら”に賭けてみようぜ」




 ────もう誰でもいいから、あいつを救ってやってくれ。




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