天色ガール【修正版】
「あーー、笑った笑った!」
コウのスーツ姿で笑い続けて、やっと笑いが収まった。
……途中から気持ち悪い声になっていたのはわかってる。でもツボにはまると、どうしてもあんな笑い声になってしまうんだ。
「笑いすぎですって!!」
耳を真っ赤に染めているコイツの名前は、荒野 勇。歳は27。
彫の深いワイルドな顔立ちで、昔の明るい茶髪が今では暗い茶髪になっていた。
あたしは苗字から取って「コウ」と呼んでいる。
──キーンコーンカーンコーン
「……あのさ。あたしの教室ってどこだっけ」
予鈴が鳴り、すっかり忘れていた授業の存在を思い出して二人に尋ねた。
「そういやアメさん、俺のクラスの“転校生”じゃないですか!」
「ちょっと待て。行く前に頼みたいことがあんだけど」
コウと一緒に教室に向かおうとしたのを暁に止められた。
頼みにくいことなのか、なかなか内容を教えてくれない。
「その……、今から屋上の戸締まりを確認してきてくれねぇか?」
「今から? もうすぐ朝礼始まるし、放課後ならいいけど」
そう伝えると、暁はしばらく頭を捻って。
「……確認したら今日はもう帰っていいって条件ならどうだ」
「え、いいの!?」
“今行ってくれるなら”を何度も繰り返す暁。それだけでもう帰っていいなら行くに決まってる!
頼みを受け入れたら、「鍵は持って帰っていーから」と銀色の少し錆びた鍵を投げつけてきた。それもかなりのスピードで。
キッと奴を睨めば、てへっと笑顔でウインクしてくる。うぜぇ。
「……わかった。じゃ、また明日!」
屋上の鍵を握りしめて、あたしは理事長室から飛び出した。