天色ガール【修正版】
はあぁー、疲れた。本気で逃げるってどんだけだよ……。
俺は軽く息を整え、飴ポーチの時と同じように輝から奪い取ったクッキーを脇に置く。
昼から見ていた白のノートパソコンを開けば、みんなが近くに集まってきた。
「……この族、知ってる?」
画面には一枚の写真。
赤い特攻服を身に纏った何十人もの男達が仁王立ちで背を向けている。
その背中には────“火花”
そうデカデカと金の刺繍が入っていた。
「ヒバナ? ……知らねえな〜」
「聞いたこともねェな」
写真をじっくり見た後、そう藍と茜が口にする。
輝も目を凝らして画面を見ていたが、「……知らねぇ」と何もわからない様子だった。
まぁ知らないはずだ。全然有名じゃないし。
「“火花”は、50人にも満たない人数で構成された最近にできた族。だから規模も小さいし“閃光”の敵じゃない」
「はっ?」
パソコンにあった情報を簡潔にまとめると、“じゃあこの族がなんだよ?”とみんなは顔を顰めた。
敵ではないが、問題はある。
「昼に脅迫メールが送られてきたんだ。……奴らの狙いは、俺たちの姫」
最後の一言で、部屋の空気が一気にピリついた。
「──早くねぇか」
沈黙を最初に破ったのは、輝だった。
そう。族の弱点である姫が狙われるのは当然のことだけど……そういう輩が“動き出す”のが、予想以上に早いんだ。
(……なんで)
“閃光”は関東一の暴走族。
迂闊に手は出せない存在なのに、彼女が姫になってたった一週間で。それも最近にできた族が。
命知らずの馬鹿か。それとも────
「……はぁ。また面倒事が増えた」
勝算が、あるのか。