天色ガール【修正版】
「アメ、あの時のことは違う!」
「あれは全部アイツのせいで、アメさんは悪くありません!!」
隣に立つ二人が声を荒らげて否定するが、何が違うというのか。
多くの人を巻き込んで傷付けた“あの事件”は、あたしが原因で起きたことだ。
「千暁。勇」
黙り込むあたしに暁とコウが何か言おうとしたのを、父さんが名前を呼んで制した。襖の方に目を向け、“席を外せ”と無言で圧をかけている。
二人とも不満げな顔をしていたが、父さんの強い視線に押されて「……外の空気吸ってくる」と部屋を後にした。
「……わかってるよ。俺も出ていく」
同じ圧力を受けたクモも肩をすくめて部屋を出たから、今この場にいるのはあたしと父さんだけだ。
何も言えずにいたら、父さんは眉根を寄せて深く息を吐いた。
「お前は、あいつらが傷付くのを見たくないんだよな」
あいつら、とは“閃光”のみんなのことだろう。
あたしが首を縦に振ったのを見て、父さんは真剣な表情で言い放った。
「彼らはそんなに弱いのか」
「……っ、」
父さんは思わず顔を顰めたあたしを一瞥して、懐から取り出した煙草に火をつけた。
ゆらりと紫煙が立ち昇り、嗅ぎ慣れた匂いが辺りを漂う。
「……あいつらは、ただお前を姫にしたいから“仮の姫”を提案したんじゃないか」
とん、と軽く煙草を灰皿に叩いて、突然父さんが可笑しなことを言い出した。