最期の言霊


そして、クリスマスイブの日曜日。
いつものように笹森さんがやってきた。

「今日も来てくれたの?せっかくの日曜日のイブくらい、大切な人と過ごせばいいのに。」

俺がそう言うと、笹森さんは「だから、今日も来たんだよ?」と言った。

「えっ?」

驚く俺に微笑みかける笹森さん。

すると、バッグの中から、何やら小さな紙袋を出し、それを俺に差し出した。

「何?」
「クリスマスプレゼント。」
「え、いいの?」

俺がそう言うと、笹森さんは頷き「開けてみて?」と言った。

俺は袋を開け、中の物を取り出した。
それは「健康運」と書かれたお守りだった。

俺はそれを見て、涙が出てきた。

笹森さんらしいプレゼントだ。

「ありがとう。」
「ううん。大したものじゃないけど、貰ってくれる?」
「もちろん。肌見放さず持ってるよ。でも、俺は何も渡せなくて、、、ごめんね。」

俺の言葉に首を横に振る笹森さん。

そして「隼人くんが生きててくれてることが、何よりのプレゼントだから。」と言ってくれたのだ。

「そっかぁ、ありがとう。俺、、、いつまで生きてられるかなぁ。桜、見られるかなぁ。」
「隼人くんは、大丈夫。桜、見られるよ。」

笹森さんはそう言うと、繰り返し「大丈夫。」と言った。

笹森さんに、「大丈夫」と言われると、本当に大丈夫なような気がしてくる自分がいた。

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