最期の言霊
年末になり、俺の容態は悪化していた。
もう身体には力が入らず、寝たきり状態で腹水も溜まり始めていた。
俺はもう、自分に諦めていた。
もうダメだ。
最初は桜が見れるかどうか、なんて言われたけど、やっぱりそこまでは生きられない。
午前中に伸也とヒカリが見舞いに来てくれて、「また明日来るからな!」と言ってくれたけど、俺はそれまで生きていられるだろうか。
年を越せるのか?
自分の腕を見ると、今までの点滴を刺した跡で所々が黒ずんでいて、皮膚は黄色くなり黄疸が出始めていた。
すると、コンコンッと病室のドアをノックする音が聞こえた。
もう夜だし、看護士さんかな?と思ってドアの方を見ると、開いたドアから顔を出したのは、看護士さんではなく笹森さんだった。
笹森さんがこの時間帯に来るのは初めてだった。
「隼人くん。あと数時間で年が明けるよ。」
笹森さんは俺のベッドの横にある椅子に座りながら、そう言った。
俺は力無く「そうだね。」と答えた。
「今日はね、隼人くんに大事な話をしに来たんだぁ。」
笹森さんはそう言うと、俺の手をそっと握りしめた。
彼女の手は温かかった。