最期の言霊
それに気付いた俺は「ダメだよ、、、笹森さん、、、」と言った。
しかし、彼女はやめなかった。
俺の胃のあたりに手をかざしたまま「隼人くんは大丈夫。病気が完治して、仕事にも復帰出来る。そして、綺麗な満開の桜が見れるよ。」と唱えるように言い続けていた。
すると、ふと笹森さんは力が抜けたようにガタンと音を立て、椅子に座った。
力を使い果たした。
そんなような疲れた表情をしていたのだ。
「隼人くん、これでもう大丈夫だよ。」
そう言う笹森さんを見て、俺は泣けてきた。
涙が溢れて止まらず、笹森さんの顔がぼやけて見える。
「楓、、、俺、楓のことが、好きだ、、、。だから、これからも、一緒に、、、」
俺がそう言いかけると、笹森さんは、楓は、嬉しそうに「初めて楓って呼んでくれたね。」と言って微笑んだ。
「隼人くん、幸せになるんだよ。」
楓はそう言うと立ち上がり、俺の額にキスをした。
そして「じゃあね。」と笑顔で病室から出ていこうとしたのだ。
「楓、待って、、、楓、、、」
俺が呼び止めても楓は振り向かずに病室から出て行った。
俺に追いかける力があったら、、、何で俺の身体は動かないんだ!!!
楓を止められなかった自分が腹立たしかった。
それと共に悲しくて、寂しくてたまらなくなり、俺は涙を流し続けた。