最期の言霊

「隼人くん。わたしたちが一番最初に出掛けたときに話した、わたしの秘密覚えてる?」

笹森さんの、秘密?
あぁ、そういえば、、、

俺は力無い声で「言霊、、、?」と言った。

笹森さんは優しく「うん、正解。」と言い、続けて「それを今日は使いに来ました。」と言った。

言霊を使いに来た?
俺は笹森さんの言っている意味が良くわからなかった。

しかし、笹森さんは話を続けた。

「隼人くん。隼人くんは桜が見れるよ。スキルス胃がんも完治して、他に転移したがん細胞も無くなる。体調も元通りになって、また仕事にも復帰が出来るよ。」

笹森さんは夢のような話をした。

本当にそうなればいいのに、、、

そして笹森さんは切なそうに微笑み、一粒の涙を流した。

「わたしの分まで生きてね。」
そう言って、笹森さんは俺の病気の一番の原因である胃のあたりに手をかざした。

すると、お腹のあたりが温かくなっていくのを感じた。
不思議な感覚だ。

え、これってもしかして、、、

俺はあることに気付いた。
これは、笹森さんが自分の命を削って言霊を使っているんじゃないか?と。

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