『世界一の物語』　～人生を成功に導くサクセス・ファンタジー～
　その後、呂嗚流とフランソワは眠りについたが、その間もHONDAジェット・エリートは順調に飛行を続け、無事日本に到着した。
　羽田空港には特別仕様のリムジンが出迎えていた。
　どこかの大統領専用車のような分厚いドアと防弾ガラスを装備していた。
　2台の大型バイクが先導し、リムジンの後方では補助席付きの超大型バイク2台に乗った屈強そうな男たちが睨みを効かせていた。
　
　美家に着くと、フランソワは車から降り、低い位置にある自分専用のチャイムを肉球で押した。
「あら、フランソワ」
　お手伝いの軽子が驚くような声を出したと思ったら、更に大きな声で「お嬢様～」と呼んだ。

　少しして鉄製の門が開き、リムジンと4台のバイクが美家の敷地に迎え入れられた。
　そして、3分後、玄関に着いた。
　
　椙子が純白のミニドレス姿で玄関の前に立っていた。
　相変わらず綺麗だった。
　しかし、いつものような輝きを放っていなかった。
「心配したのよ」
　いきなり抱き上げられた。
　竜巻に巻き上げられてから眠れなくなって、食事も喉に通らなくなったのだという。
「申し訳ございません」
　連絡しなかったことを詫びると、「元気でいてくれたらそれでいいのよ」と笑みを返してくれた。
　僕は幸せだった。
　世界一の美女に愛されていることに酔いそうだった。
　しかし、それも呂嗚流の登場で一変してしまった。
　顔をキリッと引き締めてリムジンから降りてくると、椙子様の表情が変わったのだ。
「まあ～、あなたは露見呂嗚流様……」
　その途端、恋に落ちたようだった。
　僕は放り出され、一人ぼっちになった。
　
　
< 16 / 117 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop