『世界一の物語』 ~人生を成功に導くサクセス・ファンタジー~
 フェラーリが横付けしたのは、正に、中世のお城のようなシャトーだった。
 貴族の館と呼ぶにふさわしい風格があった。
「サンテミリオンの中でも、特別なワイナリーなの」
 サンテミリオン? 
 ボルドーじゃないの?
「ボルドー地区の中に多くのエリアがあって、その中の一つがサンテミリオンなの。ボルドーの中でも特別なエリアの一つよ。何故なら、サンテミリオン、メドック、グラーヴ、ソーテルヌの四地域だけに許された独自の公式格付けがあるからよ。それが〈グラン・クリュ〉なの。優れたワインを生みだす特別な畑のことよ」
 そこで玉留は自慢げに蘊蓄(うんちく)を傾け始めた。
 
 サンテミリオンは古代ローマ時代に起源をもつ街で、8世紀頃から修行僧らによってワイン造りが始まり、今では5,500ヘクタールの土地に1,000のシャトーが密集する有数のワイン産地となっている。
 そのため『千のシャトーが建つ丘』と称されるようになり、1999年にワイン産地として初めて世界文化遺産に登録された。
 そのこともあって、人口わずか2,000人ほどの街に年間100万人の観光客が押し寄せている。
 主なブドウ品種はメルロで、それを主体として、カベルネ・フランやカベルネソーヴィニヨンをブレンドしてワインが造られる。
 その味は重厚でありながらも、柔らかくて、滑らかで、ふくよかで、ボルドータイプの赤ワインが苦手な人でも飲みやすいことで知られている。
 
 滔々(とうとう)とまくし立てた玉留は、そこでツンと鼻を持ち上げた。
「そのサンテミリオンの中でも最上級に位置する葡萄畑がここなの」
 渡されたパンフレットには『シャトー・リッチ・ウーマン』と記載されていた。
 なるほど、そのまんまね、
 
 
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