『世界一の物語』 ~人生を成功に導くサクセス・ファンタジー~
 呂嗚流が旅立ったあと必死になって頭を絞ったが、何も浮かんでこなかった。
 テープに録音された呂嗚流のハミングに詩を載せようとしても、一言も浮かんでこないのだ。
 その理由はわかっていた。
 誰かに伝えたいことが何もないのだ。
 すべてが満たされている自分の中にメッセージなんて存在するはずはなかった。

 呂嗚流様……、
 椙子は、彼が残していった銀紙が貼られたアルバムを手に途方に暮れた。
 内面と真摯に向き合っても何もないことに気づかされるだけで落ち込むばかりだった。

 呂嗚流様……、
 救いを求めるような呟きがアルバムに落ち、帯に書かれている対自核という文字に吸い込まれていった。
 わたし自身の核に向き合う……、
 (かす)れた声が口をついた。
 もう何度呟いただろう。
 しかし、対自核は何も教えてくれなかった。
 冷ややかに見つめ返されるだけだった。

 何か言って……、
 しかし、沈黙以外に返ってくるものはなかった。
 それが続くと、瞼が次第に重くなってきた。
 もう何日も寝ていなかった。
 気力、体力共に限界に達していた。
 あくびを止めることはできなかった。

 ダメダメ! 
 両頬を強く叩いて目を覚まそうとした。
 しかし両瞼は重く、1ミリも開けていられなかった。
 あ~もうダメ……、
 こっくりこっくりと舟を漕ぎ出した。
 そして、遂に銀紙の上にうつ伏した。
 その途端、吸い込まれるように異次元の世界へ落ちていった。
 
 
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